保育士さんにとって一番の悩みの種「サービス残業」。多くの保育園ではタイムカードを押した後に作業しなくてはいけなかったり、タイムカードがもともと無かったりすることも…。その過酷な労働システムは一日でも早く改善されるべきですが、どうやら原因は保育士さん自身の「意識」にもありそうです。
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保育士さんは業務時間内に収まりきらなかった仕事をサービス残業や自宅に持ち帰ってこなしています。それらすべてに残業手当がつけば保育士さんの月給は30万円程度になるだろうといわれています。
「子どもを預かること」だけを保育士の業務と捉えられ、それ以外の業務は「仕事」として捉えられません。保育園側もその認識を改善しようとしません。それが「当たり前」だと思っているからです。そのような「間違った常識」が保育業界に蔓延しているのです。
厚生労働省が発表した「保育士の平均残業時間」は「1ヵ月で4時間」。しかし実際は「1日に4時間前後」と言われています。「サービス残業」は「残業」に含まれません。
また、本来であれば1時間の休憩も与えられているはずですが、子どもがたくさんいる現場ではそれもままならず、実際にはお茶をゆっくり飲む時間もありません。これも「当たり前」です。
サービス残業の内容 |
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・保育計画書 ・園だより、クラスだより ・保育計画記録 ・イベント準備 ・室内の装飾 ・お誕生日カード ・ピアノや歌の練習 ・掃除、雑用 |
働く人は残業や家に仕事を持ち帰ることなく勤務時間内にすべての仕事を終わらせることが本来あるべき姿です。ではサービス残業が多い保育士さんは「仕事を時間内に終わらせることができない能力のない人」ばかりなのでしょうか?
答えはもちろん「NO」です。そもそも保育士さん1人当たりの仕事量がとても多く、その大半が子どもの保育の片手間ではできない業務ばかりです。これでは残業を余儀なくされることは当然のことです。
日報や計画書を作成するのは保育士さんの仕事ですが、その他の細やかな仕事をこなしてくれる人員を確保するほど保育園にはお金も余裕もありません。結果、保育士さんひとりひとりがカバーをしなくてはならず当然残業時間は増えます。場合によっては土日に自宅で作業することも。
これによって保育士さんは自分の時間やリフレッシュする時間を確保できずに体調を崩してしまったり、精神的に疲弊してしまいます。
サービス残業のもう1つの原因は「サービス残業をしなくてはいけない空気」です。保育園という環境上、先輩や園長よりも早く帰ったり、仕事をしないということはご法度。たとえ仕事が終わっていたとしてもなかなか帰りづらいのです。
また、園長に「帰っていいわよ」と言われることもありますが、それは残業代を出したくないからであって、仕事を減らしてくれるわけではありません。あくまで「私は帰っていいと言ったけど残業をしている=すすんでサービス残業をしている」という縮図を作りたいだけの場合が多いのです。
ほとんどの保育士さんは残業に見合った手当を貰えていません。では残業のモチベーションどのように保てばいいのでしょうか?答えは「子どもたちへの愛」です。「たとえ無給だとしても子どもたちのために働くわ!」という気持ちがないと日々の過酷な残業を乗り越えれないのです。
しかし、これは誤った意識です。仕事量の多い少ないは「愛情の大きさ」ではありません。子どもたちへの愛があるのであればしっかり休養を取って心身ともに健康な状態で子どもたちと向き合うべきなのです。
サービス残業をなくすためにはまず「自分が普段どのようなスケジュールでどのぐらい作業に時間をかけているか」を知ることが大事。そして作業時間を整理して目標を立ててそれに向かって仕事することが大事です。
例えば資料作成の際には決まったフォーマットを作って日々の業務を書き込むだけという環境を作ったり、室内の装飾や衣装などはなるべく作成に手間のかからない工夫や素材を使うなど。「この時間までに終わらせる!」という意識を持つだけでもだいぶ違います。
先ほども書いた通り、「子どもたちの為にもサービス残業しなくてはならない」という認識は捨て、キチンと労働時間にのっとった「仕事」と捉えて作業しましょう。また、ほかの保育士さんと率先してコミュニケーションを取り、仕事を分担して効率よく仕事ができれば自分だけでなく、周りの保育士さんの残業時間も減るはずです。
保育士のサービス残業。その実態と原因は非常に複雑で根深い問題です。保育士の力だけでは解決できないことも多いでしょう。しかしひとりひとりの意識で少しでも減らせることはできるはずです。現状に翻弄されずにまずは「自分のすべき仕事」を受け止め、試行錯誤や工夫をして作業を効率的にこなしてみてはいかがでしょうか?
そしてその「自分は時間内にこれぐらいの仕事ができた!」という意識は「自信」につながります。それを上司や園長にアピールすることによって帰りやすい空気になったり、周囲の意識も変わるかもしれません。
それでもどうしても環境が改善されなかったり、それによって心身が疲弊してしまいそうであれば「環境」を変えてしまうのも得策です。公的機関や「保育士転職サイト」などのアドバイザーに相談してみてはいかがでしょうか?決して無理をせず、快適な環境で保育をしてください。